林業

樹木の生理的適地・生態的適地についてひのき植栽地で観察

2022年9月11日

「適地適木」という言葉があります!

植栽地を観察すると、どんな場所が樹木にとって気持ちがいい場所なのか?

だんだん見えてくるものがあります!

どうも、こばけん(@5884kentaです。

ひのき植栽地

ひのき植栽地

 

私は、森林組合で育林班に所属しており、この夏はひのきを植栽した人口林の下草刈りで毎日汗を流しています💦

山の斜面の谷から尾根に向けて歩きながら草刈りをするのですが、

斜面の下部と上部では生えている木の様子が全然違います。

 

その現象が何故なのか?「生理的適地」という言葉を用いてご紹介します。

また、人口林と天然林ではまた違った環境になるのですが、それは「生態的適地」で説明ができます。

 

ひのき人口林の谷と尾根での樹木の様子の違い

ひのき植栽地

ひのき植栽地

 

こちらの写真は、ひのきの苗を植林して4年目の人口林になります。

左下が谷で、右上が尾根部になるのですが、明らかに緑の濃さが違うのがお分かりいただけますでしょうか?

 

谷部の様子

谷部の様子

こちらが谷部の様子です。4年目なのですが、ひのきは人の背丈よりも全然大きいです。また、ひのき以外の植物もわさわさと生えています。

 

尾根の様子

尾根の様子

一方、こちらが尾根の様子ですが、同じ4年目のひのきとは思えないぐらい小さく成長していません。また、ひのき以外の植物もまばらにしか生えていません。

 

何故このような現象が起きるのか?不思議ですよね?

 

端的にいいますと、谷と尾根の土壌や水っけの豊かさの違いが大きく関係しています。

 

雨が降ると、水は上から下に流れ落ちていきます。ですので、尾根に降った雨は谷に向かって流れ落ちるのです。

水が流れ落ちる際に、土砂や落ち葉なども一緒に流れていくので、

尾根は痩せて乾いた土壌!谷は肥えて湿った土壌!になっていくのです。

 

当然、肥えて湿った土壌のほうが植物の成長は早いです。

なので、同時に植栽したひのきでも、谷と尾根では苗の成長具合が全然違うのです!

これは、植栽したひのき以外の植物にも同じことがいえます。

下草も谷ではわさわさと大きくなっているのですが、

尾根ではまばらで小さい草が分布します。

 

ひのきの生理的適地・生態的適地

樹木には、それぞれ好む環境があり、そのことを生理的適地といいます。

 

ひのきの植栽の適地は、斜面中腹から下部で、土壌構造は団粒状構造・塊状構造が発達した「適潤性褐色森林土」になります。

 

ですので、尾根や山頂・斜面上部で、「乾性褐色森林土」では成長が良くないです。こういった場所はマツの植栽に適しています。

マツの成長が良い尾根

マツの成長が良い尾根

こちらは、尾根で人口林の境界です。

左側に見えるマツは、自然に生えています。尾根部ではマツが適しているのが分かります。

 

今回、人口林のケースをご紹介しましたが、天然林では同じことは言えないです。

 

ひのきの生理的適地である、斜面中腹から下部は、他の多くの植物にとっても適地となっており、更新段階や幼齢段階でトチノキなど他の樹種との競争に負けることが多いため個体の分布は少ない。人口林においては、下草刈り、除伐などの人為的な管理をすることにより競争相手が排除されるため、生理的適地において良く成長することができます。

 

一方、天然の環境では、ひのきの個体は土壌が比較的薄く土壌が乾燥気味の斜面上部や中腹に多く見られます。

これは、競合する他の樹種が少ないことによるもので、このような土地をひのきの生態的適地といいます。

生態的適地とは、自分の特性だけではなく、周囲の生態系とのバランスも含めて考えたときの適地になります。

 

人も植物も周囲との競争からは逃げることができないのです。

植物は自分で歩くことはできないので、生まれ落ちた場所で精一杯努力するしかないのですが、人間は移動することができます。

 

必ずしも自分の得意だけ考えて生きるのではなく、自分が生きやすい環境に移動して生活してみるという発想を持つと面白いかもしれませんね♪

 

そんなことをひのきの生理的適地・生態的適地から考えさせられました😊

 

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こばけん

32才で大阪のメーカーを退職し、林業の世界に転職。 里山資源を活用した半林半Xな暮らしをするために地方移住。

林業が「自分の力で生きる」うえで最強だと思っている。 里山暮らしや林業の日常を発信しています♪

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