【森林文化アカデミー学生日誌 vol.7】
森林の獣による被害を知っていますか!?
林業への金銭的打撃はかなりひどく、山主さんが森林管理する心を砕くような状況になっています。
森林文化アカデミーの講義で、「森林獣害」について学びました。
今回、獣害被害が深刻な現場の視察をしてきました。
想像していた以上に、シカの被害は深刻でした。
現場で見て学んだことを、ブログにまとめました。
どうも、こばけん(@5884kenta)です♪
森林獣害の状況
上記グラフは林野庁HPに掲載されているのですが、
獣による森林被害の7割は、シカによる被害です。
現在、日本ではシカが増えすぎています。そしてそのシカが樹木の新芽や樹皮を食べる被害が多発し、困っているのです。
なぜ、シカがそんなに増えてしまったのでしょうか?
それは、昔はシカを捕食するオオカミが居て、シカの頭数抑制になっていました。
しかし、人間の乱獲によるオオカミの絶滅が一つの大きな要因です。
現在の森林では、シカを捕食する動物はほとんど居ません。
森林の生態系ピラミッドの頂点に存在するのはクマやタカです。
クマは、ほとんどドングリや木の実などを食べているので、シカを襲うことは少ないようです。
タカは、小動物を捕食しているので、体の大きさ的にシカを捕まえて食べるのは難しいでしょう。
頼みの綱は人間の猟師さんですが、猟師の人数も減っていますし、高齢化のため、
捕獲による頭数制限も追いついていない状況です。
その他にも、多くの要因が絡み合って、現代の獣害被害は拡大しています。
一例を列挙すると、
ポイント
・造林面積の変化(戦後拡大造林からの、今は部分的な造林をしている状況)
・野良犬の徹底した保護(昔は野良犬が人里に降りてくる獣の番犬になっていた?)
・山村地域の過疎化
・無意識下での餌付け(ピクニックなどの食べこぼしなど)
こういった変化から、シカが住みやすい森林になってきているという背景もあります。
獣害被害現場
具体的に、どんな被害が発生しているのでしょうか?
今回の実習では、特に獣害被害が深刻な現場を視察してきましたので、ご紹介します。
ちなみに、今回の視察は車で林道を入って行ったのですが、29頭ものシカに出会いました(^◇^;)
下層植生の消失
森林獣害フィールドサイン①
下層植生が全然無い
シカが下草を全部食べ尽くしている。
下層植生が乏しいことにより、雨が直接土に当たってしまう。
表土流出による土壌劣化、土砂崩壊リスク増。痩せた土壌になることによる樹木成長への悪影響などが懸念されます。 pic.twitter.com/trmXggkWdB— こばけん| 林業✖️森林文化アカデミー (@5884kenta) June 14, 2023
シカが多い森林では、食べれる草は全部食べられてしまいます!
一見、見晴らしが良くて気持ちがいい森林にも見えてしまいますが、
これは水源涵養や土砂流出防止といった観点からも、森林の機能が低下してしまっています。
樹皮の皮剥ぎ
森林獣害フィールドサイン②
樹皮剥ぎ
シカが下草を食べ尽くして食べ物が少なくなると、樹皮を剥いて食べます。
1番木材として高く売れる根本がやられます。水分や養分を吸い上げる機能までやられてしまうと、成長が凄く悪くなってしまいます。
育てた木が台無しになる山主にとって最悪の悪戯です pic.twitter.com/hMiTGlaQdN
— こばけん| 林業✖️森林文化アカデミー (@5884kenta) June 14, 2023
シカは、まずは美味しい草の新芽を食べるのですが、
食べ尽くして食べるものが無くなると、樹皮も食べます。
せっかく、木材としていい状態まで育ったのに、皮を剥がれると木材の価値が下落してしまいます。
それに、その後の木の成長も悪くなってしまうので、山主さんにとって深刻なダメージです。
植栽した苗木を食べられる
森林獣害フィールドサイン③
大きくならない苗木
シカが植栽した苗木の新芽を食べてしまいます。特にてっぺんを食べられると、なかなか上に伸びる事ができません。
そして、身体の至るところから必死に葉っぱを出して、マリモのような姿になり、木材としては全然売れない山になってしまいます😱 pic.twitter.com/nyy1dSaPrZ
— こばけん| 林業✖️森林文化アカデミー (@5884kenta) June 14, 2023
こちらの写真の苗木は、10年以上前に植栽したそうです。
しかし、全然森になっていません。本来、10年も経てば、背丈の倍以上の大きさに育っているはずです。
シカに新芽を食べられることによって全然成長しないのです。
それでも木は一生懸命生きようとして、体の至る所から葉っぱを出して、マリモのような形になっていました。
ここでは木材生産の林業はできない状況になってしまっています。
ディアーライン
シカは地面に生えてる草だけでなく、首が届く高さの葉っぱを全部食べてしまう😱
通称「ディアーライン」
見通しは凄くいいんですけど、これもシカが多いサイン(^◇^;) pic.twitter.com/tQx8sy9ndK
— こばけん| 林業✖️森林文化アカデミー (@5884kenta) June 16, 2023
こちらも、シカが多い森林のフィールドサインなのですが、
シカの首が届く高さの葉っぱは全部食べられています。
シカの除草能力恐るべし。。。
以上、森林獣害の被害現場の視察をまとめさせていただきました。
シカは、絶対的な悪ではないのですが、頭数が多くなりすぎると、こうやって人間の営みへの被害がでてしまいます。
林業もですが、農業でも被害は深刻です。
人と獣がバランス良く暮らせる里山をどうやって維持していくのか?
これからの林業のあり方も含めて色々と気づきがある講義でした。
ありがとうございます。
なお、森林獣害をもたらすシカですが、地域によっては「神の使い」として
崇められ、観光名所になっているようです。そちらの様子を下記ブログでもご紹介しております。
よければ読んでみてくださいm(_ _)m
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